2012年11月

2012年11月30日

5183d223.jpg各政党の代表がテレビで討論する。
ウソつきはすぐにわかる。
でもどんくらいのひとが
それに気付いているのかわからない。
そこがとても不安だ。
耳にやさしいことばだけじゃないぞ。
理想と現実。
世の中を変えたい気持と
皆を豊かにすることは相容れない。

清濁併せ持つ気持が無ければ多くの
民に幸福をもたらせはできないだろう。
小異を捨て大道?
装衣を捨てた大道芸人ではないのか。

実現できない事をさもできそうに語るのには
もう、うんざりしているんだ。
奴らが、権力を持てば出来そうな気がしていたとしても
できないものはできないのである。
現実に即して未来を直視している人は
私にはたったひとりに見える。

日本を担う気持があるからこそ
耳にやさしいだけのキャッチコピーは語らない。
いや、語っちゃいけないのである。
公約は果たすべきだから。

2012年11月29日

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ジョージのソロアルバムには興味がなかった。存命中
聴いたのは「クラウドナイン」と「33 1/3」の2枚だけ。

彼の作品のすばらしさを知ったのはここ最近の事だから
後追い感は否めない。

しかし
ポールもジョンもビートルズの頃が最高なのに
ジョージは1966年頃からずっとすばらしいのだ。
進化し続けているのだ。

和音もその進行具合もすばらしいが
そこにのっかる歌詞の深さは
若い頃にはきっとわからなかっただろう。
きっと、ベストなタイミングで出会ったのだ。

好きな曲はたくさんあるが
「Isn't it A Pity」
この曲はオリジナル曲のように
クラプトンが今も歌い続けてて
そんな友情にもホロっとしてしまう。



2012年11月28日

47613499.jpg今夜は満月だ。
昨夜の月を見ながら
月の満ち欠けのある世界に
生きていられる事に猛烈な
感謝の念が湧いたのである。
うつくしい。
ほんとうに美しい月だった。
今夜もたのしみだ。

「大島さん太りました?」
などと聞かれたのだが
本日測定してみると
なんの変化もなかった。

相変わらずタイトな時間を過ごしてはいるが
どうやらほんのりアロハな気持を
取り戻したようである。
みなさまのおかげです。
ありがとう。




2012年11月27日

99a2b0ac.jpgハワイ島からのお届けもの。
うれしいプレゼントだ。
バナナの葉なのか手編みの
とってもすてきな器。
さっそくパイナップルを入れた。
良い感じだ。
ちょびっとのご縁をたいせつにする
その姿勢に感動した。
Much Mahalo、
Denis & Yoko
One Love、One Heart.

2012年11月26日

bf88a345.jpg名古屋に住んで半世紀である。
「しょうびゃあ(商売)」なんて言葉は
今までいちども聞いた事がない私であり
テレビから聞こえてくると虫唾が走る。
名古屋人はあんな品のない響きの
言葉は使わないことを、謹んで
ご理解頂きたいものである。
名古屋弁は城下町の上品さが身上である。

2012年11月25日

0d2deae1.jpg「なにネッカチーフしとんの」と
聞かれるが、申し訳ない、こいつは
れっきとしたタイであり
布切れを巻いているわけではなく
わりと正装である。
仕立てもしっかりとしていて
しかもリバーシブルであるのだが
ご存知ないお方が多くて驚いている。
コートを着るほどでもない日には
バッグに入れておいても
マフラーほどかさばらないし
あたたかいのでお薦めである。
アスコットタイ、アスコットスカーフ
パフタイなどいろんな名称だが
wikiってもよくわからない。
我々世代はアスコットタイと呼んでいたけれどな。

2012年11月24日

75cdfaf3.jpgJackson Browne を聴いている
『Running on Empty』である。
高校3年生の時に奮発して
クロムテープに録音した。
それほどの作品である。
当時、高校生にとって
クロムテープは高級品だったのだ。
ライブ終了後の余韻。
それを味わうのには
最高のアルバムだ。





2012年11月23日

2a7b5097.jpg山内'Alani'雄喜さんのライブは
理想のライブだった。
本当にすばらしかったのである。
私の理想とするレストランのライブは
食事や会話を愉しみつつ鳴っている
BGM以上Live未満。
わかり難いか。
CD並のクオリティなのに
その500倍の音の拡がりだ。
最高の音楽をバックに
時間と空間と料理を愉しんで
いただけたなら至幸の歓びなのである。

嗚呼、こんなライブがして欲しかった。
そんな感じである。

最高の夜。

厨房に入ってお料理してた時ですら
心地良く響いてきたのである。

次回はGW前後になるだろうが
たのしみにしていて欲しい。
今回集ってくれたお方々には
こころから感謝申し上げるものである。
Much Mahalo!

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2012年11月22日

66405380.jpg「なんかしゃん」という言葉は
名古屋では頻発するのである。
つまりいろんな意味で使えるのだ。
たとえば「なんかしゃんきいないの」
(なにか黄色いもの)
「加藤なんかしゃん」
(加藤なにがし)だの
「ブルーライトなんかしゃん」
(ヨコハマが思い出せない)とか
はたまた「なんだろうね?」という
疑問形でも頻繁に使われる。

英訳するならば『Something』なので
ジョージハリスンのかの名曲は
名古屋訳すれば「なんかしゃん」なのである。

2012年11月21日

9260a0cd.jpg『ワイルドでいくぞ』
このアルバムからは
多くの人生訓を得た。
つまり多大な影響を受けたのだ。

そのなかのたった一曲の
歌モノでありラブソング。
今夜はこの曲が気分だ







<付録>


2012年11月20日

5ca333d3.jpgイタリア、トスカーナの
モリスファームズの造る
マンドリオーロ'11
葡萄品種はサンジョヴェーゼ80%と
カベルネ、プティ・ヴェルド。
とても親しみやすい味わい。
ワインは食中酒である、と
言わんばかりの味わいで
どんなお料理にも相乗しそうだ。
特に主張しないのに脇役に徹する
その姿勢からは名脇役の称号を与えたい。
バランス良く調和したその味わい。
モリス持てばスーパースターも夢じゃない。

脇役といえばこの曲だろう。
たった40秒のビデオってのがシブい。




2012年11月19日

4201ed13.jpg「さぶいな。鮟肝食べてゃぁな」
「ええねぇ」
「ほったらいつもの魚屋に頼んどくわ」
「ほらあんきだ。鮟肝だけに・・んぷっ」




<訳>
「この寒さになると鮟肝食べたいな母さん」
「それはナイスアイディアですね」
「じゃ三河屋さんに注文しておくぞ」
「安心です。あ〜〜〜ん、キモ。なんちゃって」
   (フネさんそんな事言わんか)

2012年11月18日

ca912344.jpgお客様から「ブログで紹介してた本。
めっちゃおもしろかった」などと
喜んでいただくと共有できて
とっても嬉しい私である。
こんな私でもお役に立てて光栄だ。
しかしながら、である。
時男と計子のその後を聞かれると
くすぐったいので禁止したい。
そこんとこヨロシクである。

さて、私のクリスマスの定番は
この何十年と変わっていないのだが
今さらながらご紹介したい。

カーペンターズのクリスマスポートレイトだ。
鉄板である。30年以上経っても色褪せないカレンの歌声。
YouTubeではどうやらそのテレビ番組が
フルサイズで見られるので音源はほぼいっしょであり
そちらもおおいにお薦めである。
クリスマスの飾り付けなどしながら聴くと
気分はモリモリにアップするのではないかな。


The Carpenters at Christmas (1977) Complete TV Special

2012年11月17日

6beec519.jpg三宅久之氏は戒名は付けず
本名でのお葬式だったそうだ。
そこで連想するのは白洲次郎だ。
遺言書には「葬式無用 戒名不用」
と記していたそうであり
まったくもって同感である。
三宅氏の葬儀も、あれだけの人なのに
近親者のみで行われたのだそうだ。
三宅氏は白洲をどう思っていたのだろう。
それが知りたかった。



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2012年11月16日

b8395cc2.jpg党首討論。衆院解散。
リアルタイムでテレビで見た。
編集したニュースでは伝わらない
その場の空気がひしひしと伝わる。
たった2秒3秒を間引いただけでも
そのリアルな臨場感は削がれる。
なんとなく歴史的瞬間に偶然に
居合わせたような気になった。
スポーツ中継とおなじような
ライブ感というか、結果だけでは
満足できないわくわく感だ。
緊張感がたまらなかった。

しかしながらやっぱりヘンだなと思う。
もっと大きな戦う相手を見失ってはいけない。
政治家の方々にはこころして欲しいものである。



2012年11月15日

8fb3d4fb.jpg三宅久之さん。
ありがとうございました。
日本のためにご尽力いただき
あなたがとっても多くの人に
多大な影響を与えた事は
誰もが認めるところです。

あと10年あったら。
日本国憲法が刷新され
活力を漲らせ甦った日本を
お見せできたのではないかと
とても残念でなりません。
ありがとうございました。合掌。

*写真はこの訃報を知った安倍さんのFBから拝借。

2012年11月14日

3791a1e7.jpg半音下がりのこの曲が
とっても好きである。
大好きなホワイトアルバムの中でも
指折りのお気に入りだ。
それを不意打ちに聴かされるともう
とんでもなく感動してしまう。
以前、ビートルズのコピーを
バンドでした時
なぜかこの曲だけ
とってもオリジナルっぽかった。
どうしてこの雰囲気が出せたのか
いまもわからない。
発売当時としたら相当に前衛的であり実験的な曲の筈だ。
でも私にとっては理屈抜きに大好きな曲。
ジョンらしさが溢れているのに、彼の
ソロアルバムでは出せなかった味わい。
ビートルズの神秘性はそこにも在るのだ。



2012年11月13日

41cf0880.jpgBeaujolais Nouveau est arrive!
いっしょに飲もうぜ。
解禁時間を守るのは
開襟シャツで皆勤するくらい
だいじなので零時に抜栓したい。
そこんとこヨロシクである。

2012年11月12日

336fe04f.jpg『日本のワイナリーに行こう 2013』
すばらしい情報量だぞ、この本は。
永久保存版なのではないだろうか。
いつかここに書いたとは思うが
私がワインに関わる仕事をしているのは
勝沼の生産者との触れ合いが原点だ。
そう。4半世紀以上前になるが
ドイツワインに不凍液を混ぜたものが
市場に出回ると云う事件があった。
そんな頃にはワインを飲む人口は少なくて
導入部分としてのドイツワインの
その理屈抜きに「おいしい!」といえる
魅力に惹かれ、当時働いていたお店が
ワインバーをオープンしたのに
いきなりの逆風が吹いたのだ。

それでどうしたかといえば
安心安全なワインを探す旅に出たのだ。
私のワインの師匠の提案である。
当時の私は彼に対し返事は「はい」か「Yes」の
ふたつの選択肢しかなかったので
勝沼まで運転したのである。

最初、今はないが一宮農協というところで
生産者の生の声を聴いた。
いかに生産者がまじめにワイン造りに取り組んでいるのか
そしてその結果をもとにあたらしい年に対して、つまり
1年単位でしか実験ができないと云う事も踏まえて
彼らの葡萄に対する真摯な姿勢にこころ打たれたのだ。

そしてそのロケーション。
ふつう山といえば杉の木が茂っているイメージなのだが
山の斜面そのいちめんが葡萄の樹と云う
想像を超えた風景にもド感動したのである。

「生産者の気持ちを伝えなくっちゃ!」

そう思わせてくれたのは勝沼の方々なのである。
この本を見てたら、初心に返ってしまい
感動で涙が流れた。
ワインを飲んだことのある人ならすべて
そう、すべての人たちに勝沼に限らず
ワイナリーを訪れてみて欲しいのである。

ワインは工業製品ではなく農作物なのだと
感じる筈だし、その生産者の苦悩や心意気に
きっとこころ打たれると思うのだ。
この本を手に取ったらその30%くらいは
理解できると思うぞ。そして
興味を持ったらぜひぜひ足を運んで
その空気、湿度、そして生産者の醸す
独特な世界に是非とも触れて欲しい。
足を運ばないとわからないすばらしい世界があるのだ。

2012年11月11日

fac7b206.jpg映画『ファミリー・ツリー』を観たが
原題はThe Descendantsという。
子孫という意味だ。
一見ハワイをテーマにした
お気楽な映画に映るのだが
めちゃんこヘビーな内容だ。
みどころはオアフやカウアイの
景色やアロハシャツや建築
はたまたラウハラなどの
装飾品だったりもするが
いちばんの見どころは
ジョージ・クルーニーが
『オーシャンズ・・・』では
あんなにカッコ良く颯爽としてるのに
この映画ではあんなにカッコ悪い「全力疾走」ができる。ということだ。
俳優業ってほんっとスゴイ。
『レインマン』でのダスティン・ホフマンの演技にも圧倒されたが
それ以来の感動の演技だ。

2012年11月10日

923171d5.jpg『スイッチオンの生き方』
どういうわけだかカウンターに湧いた。
木曜日の夜である。帰ろうと思ったら
カウンターにこの本を見つけた。
確認したが、その日カウンターにいた人は
この本を知らないのである。

湧いたのである。

しかも私は著者の講演を2007年に聴いている。
どうして湧いたのかはわからないが
とりあえず読んでおいた。
2007年のそのままである。
すでに自分の中に溶け込んでいるので
「いまさらそんなの常識じゃん」という
上から目線で読んでいる自分を
冷静に俯瞰した時。
厭な奴だと思ったぞ。
Swich on!しないとな。

いつ忽然と消えるかたのしみである。

2012年11月09日

1083e833.jpgプロフェッショナルな仕事をしよう。














2012年11月08日

a7c2d57d.jpg「ありがとう」と言ったり言われたりは
とっても素敵な事であり、できるだけ
たくさんのありがとうを言われたい。
そこで気をつけたいのは
「ありがとうございました」は
過去形だと云う事である。
この日本語の使い方をご存知ない輩は
意外に多いのであり、かつてイベントの
冒頭の挨拶でお偉いさんが「本日は
ご多用の中お集まり頂きまことに
ありがとうございました」と始めた。
おいおい終わっちゃうのかよ。である。
「ありがとうございます」というべきだ。

接客をしているとコース料理などで
ひと皿下げるごとに「ご馳走様でした」などと
言われると「えっ?」なのであり
「もう要らんのかよ?」と聞きたくなる。
たしかにその料理に関しては過去のものだが
お食事は道半ばである。

お客様には日本語の使い方をじょうずに教えられないので
これを読んだ人はおともだちが間違えて使ったら
即刻教えてあげて下さいませ。である。




2012年11月07日

46e5838f.jpg「それではごきげんようさようなら」

<訳>
「ほったらね!」




*注:写真は「野村義男とほったらね」

2012年11月06日

54fbfd1c.jpgお店はベンチシートなのだが
困った事っつーかこまったちゃんが
時折居てびっくりする。
食事の時に膝を立てたり
足を乗っける輩がいる。
頻度はウルトラ少ないので
その対処に困る。
いちどは女性であり
「すみませんが他のお客さまも
おられますので・・・」と
その足に視線を投げてみた。
直してくれたが、どうも
たがいにやりずらくなってしまう。
ぎこちなくなってしまうのだ。

空気はどうしても下のほうが温度が低いので
冷え性の女性などはベンチシートに
女の子座りしたほうが楽なのかもしれないが
見た目に美しくはない。

お店のレベルが低下したのなら私のせいだが・・・・






2012年11月05日

326cd0ed.jpgいつもふたりでランチに来るお方。
お替りするのが常なのだ。
ふたりで4人前くらい食べていくのだが
今日は二人前だけ。
軽く傷付く気の小さな私なのである。
「今日はお好みではなかったですか」
そう聞いてみると
「ごめん。スパゲティも食べたかったけど
ラーメンも食べたくて今からラーメン」
傷ついて損したぞ。
こころになにか引っ掛かった時には
相手に問うと意外にこんなものなのであり
憶測が憶測を呼ぶと勿体のない事になる。
なんでもかんでも即処理が良い。

2012年11月04日

945380d2.jpg3.11の後に書かれたこの絵が
ずっと欲しくて。
ようやく手に入った。

さっそくお店の出入口に。

2012年11月03日

5312f5c8.jpg48で連想するのは、いつも
彼女なのであり、それ以外は
発想の外なのだ。
48と聞くとこの曲が
あたまの中で鳴り響く。
当時、かなりの衝撃だったのだ。











2012年11月02日

d1ff44ee.jpg時男はとても嫉妬深いところがある。
そんなところも含めて計子は時男とは
決して離れる事ができないと考えている。
おおきな声では言えないがジェラシーから
暴力をふるわれた事もある。しかし
置きかえて考えたのなら、それは
深い愛情でもあり強い独占欲は
幼児性でもあり彼女の母性をくすぐった。
ごめんよごめんよ、と涙をポロポロ
流しながら謝る彼を抱きしめていると
私以外にこの人を包んであげられる人なんて
この世にいないのだとこころから思ってしまうし
短気なところも長所として捉えたのなら
人一倍素直なのだと考えられる。

計子は仕事ができる。
しかも余暇には自分磨きを怠らない。
セルフモチベーションがつよくはたらくので
たいていの男性は自分には荷が重いと感じてしまうのか
仲間として見てしまうのか良い飲み友達になっても
恋愛関係にはなかなか発展しないタイプだった。
美人でありスタイルも良くおしゃれで健康的なのに
どうして彼氏のひとりもいないのか、と
女友達によく不思議がられたものである。

ところが時男は違っていた。持ち前の甘えん坊な
人懐っこさを隠そうともせず出会った瞬間から
ふたりきりでいる事を好んだのだ。
ひとに甘え、そして甘えられる快感に痺れた。
必要とし必要とされる事ってこんなにしあわせなんだと
こころから思えた。

出会って1年後。ふたりでハワイへ出かけたのは
フラを踊る計子には自然なことだった。
その1年のあいだに2度ハワイにフラを勉強するために
出掛けてはいたものの、行くたびに見るもの見るもの
すべて時男に見せてあげたくなってしまう。
この空、この空気、海や雲やハワイ人のホスピタリティ
自分がすばらしいと思えるすべてを時男と共有したかった。

それが叶って眩しい光の中、ふたりはアラモアナを歩いていた。
彼はふと時計屋の前で立ち止まった。
「少しだけ見ても良いかな」
時男には身分不相応ともいえる高級店だが
リゾート地なのだし計子といっしょなら抵抗がない。
以前から欲しかったクロノグラフが目に留まると
そこから動けなくなってしまった。その機能美は
ひとを釘付けにしてしまう魅力があるのだ。

「ねぇ、ふたりの1年の記念にこの時計をプレゼントする」
「こんな高価なもの貰えるかよ。欲しかったら自分で買うさ」
「このあいだのプレゼンが見事に決まっちゃって言ってなかったけど
ボーナスしこたま入っちゃったんだ。あぶく銭は形に換えないと
いつの間にかなくなっちゃうものなのよ。だからもらってよ」

日焼けした時男にそのスイス製の重厚なクロノグラフは似合った。
帰りの飛行機でとなりで眠る彼を眺めていると、なんだか彼自身が
ワンランク上の人間になったような気がして計子も満足だった。

ハワイから帰るとふたりの日常が始まった。
楽園の余韻など感じている暇もなくハードワークだ。
夜も更けて帰ってきた計子に時男が言う。

「ね、計子。俺やっぱり仕事上とはいえおまえが
他の男と酒飲んだりするのって耐えられないんだよね」
「ばっかじゃないの。私が浮気するとでも思うわけ」
「おまえ酒が入ると淫らだしさ」
「バカ・・・・・・」
「その色っぽい感じがたまらないんだけど誰にも見せたくないじゃん」
「誰にも見せてるわけじゃないのは時男がいちばん知ってるでしょ。
もう、いい加減にしてね。おこるわよ」
「だからひとつだけお願いを聞いてくれないかな」
「なによ」
「酒の付き合いがある日にはこの時計をしててくれないか」
「・・・・・・」
「もともとおまえの金で買ったんだから酔っ払って失くしても
俺は気にしないしさ、女性がこんないかついメンズウォッチしてたら
普通の男なら口説こうなんて気も起こらないだろうし」
「魔除けなんだ」(笑)
「そんなとこかな」
「いいわよ。そんなのお安い御用よ」

「ずっといっしょだよ」

それ以来、夜出かける時。彼女の腕には
重厚なクロノグラフが光っている。

2012年11月01日

9551aa85.jpg彼女の華奢な白く細い手首に巻かれた
腕時計はそれにそぐわないスイス製の
飛行士のためのクロノグラフだ。
「どうしてメンズウォッチなのですか」
「どうしてだろ。好きだから」
多くを語らない、もしくは多くを
語りたがらない時にはそこに
深い事情があるものだとソムリエは
経験上承知している。
「よくお似合いですよ」
彼女はそっと微笑みをかえす。
承知しました、その話はそこでおしまい。
そういう示唆を含んでいる事を
彼女も心得ているからだ。

しかし好奇心旺盛なソムリエはそこで
ふたつのストーリーを思い描くのだ。

10年前のことだった。
彼女には将来を共に歩む事を決めた男性が居た。
かつてはパイロットになりたくて勉強にも
そしてスポーツにも余念のない男で
背は高く体格はがっしりとしているがスマートで人懐っこい。
高校大学時代はバスケットボール部でキャプテンだ。
パイロットにはなれなかったがその風貌と
だれからも好かれ信頼される性分は広告代理店でも
遺憾無く発揮されていた。

彼は独身最後の冒険旅行にチベットを選択した。
「ヒマラヤにどうしても登ってみたいんだ」
「ずっと言ってたもんね。でも寂しいな」
「じゃこの時計を俺だと思って肌身離さず持ってて」
ズシリと重厚な腕時計をはずして手渡した。
「こんな大きなものぐるぐる回っちゃうわよ」
「じゃ帰って来るまで抱いて寝てくれたらいいよ」
受け取ったはいいがなんとなく形見を
もらったような気がして心地悪かった。
どこかに一抹の不安が拭えなかったのだ。
「ほんとうに気をつけてよ」
彼女はしがみつくように彼を抱きしめた。

予感は当たっていた。
彼を見送ってから毎日手を合わせていたのに
残念な事に凍えるヒマラヤの一部になってしまった。

どうして彼を引き止めなかったのか。
腕時計を眺めては涙に明け暮れる毎日だった。
半年ほど過ぎたある日のことだ。
彼女はいつもバッグに忍ばせていたその時計の
ブレスレットを自分のサイズに直してもらう事を決意した。
ジャストフィットしてみるとなんだか気が晴れた。
もはや彼と手をつなぐ事はできないが、なんだか
自分の傍に彼を感じた。
守られているような安心感があったのだ。

「ずっといっしょだよ」

それ以来片時も離れずに彼女の腕には
重厚なクロノグラフが光っている。

もうひとつの妄想は。・・・・・体力切れである。つづく。(かも)

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