2009年06月17日

インターバルがもたらすもの

5f2db50e.jpg太陽をいっぱいに浴びながら
ベランダで読書していた。
なんとも風がここちよく
集中力を切らす由もない。
「冷静と情熱のあいだRosso」
どうやら平成13年に文庫化と
表記されているので、8年ぶりに
スポットライトが当たったのだ。
書棚にひっそりと佇んでいた。
当時は映画を見る直前に
辻仁成を先に読み、そのあとで
江國香織バージョンを読んだ
そんな記憶がある。

辻仁成に比べて、文字数が少ないし
会話の部分も多かったので、少ない時間で読めてしまい
江國香織には、さほどの印象を持っていなかった。

彼女の作者としての視点や表現力よりも
どちらかといえば、その辻仁成で
いちど完結してしまったストーリーに
もうひとつの色を添える、といった読み方
そして、時間軸の流れに重きを置いて
さらさらっと読んでしまったのであろう。

8年間のインターバルは、新鮮だった。
どんな本だったのかな、と手に取ったら
まるで記憶にないのである。
結局、拾い読みでなく最初から読破してしまった。

『神様のボート』 『泳ぐのに、安全でも 適切でもありません』
この2冊を去年読んでいたせいなのだろうか
彼女の文章の魅力に圧倒されたのである。
なにげない風景の描写などの中に
主人公の意思が反映されていてこころに響く。
さながら映画をみているような感覚であり
ここにピックアップしても、なんら意味を持たない
前後関係あっての深く美しい描写は、行間を読むという
行為を超えて、こころの襞の隅々にまで行き渡って
登場人物ひとりひとりが自分自身に憑依してしまうのだ。

たった8年で、こうも完璧に感性が変化しているのか、と
自分に、とっても驚くとともに完璧に忘れている自分に
なかば呆れながらも、感慨深い読書の時間を過ごせた事に
ありがとう、の気持ちなのである。

映画は正直がっかりした記憶だが
いまいちど確認したい気分になったぞ。

人間関係でも、長く付き合わざるを得ない関係があったりする。
知り合った当初はイヤな奴だったりしても、いつの間にか
長所を認めてしまい、必要不可欠な存在になっていたりする事もある。
時間というのは、生きていくうえで欠かせないエッセンスなのである。

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コメント一覧

1. Posted by 多治見のテゾーロ (笑)   2009年06月18日 00:45
読んでからずっとあおいが私に乗り移ってます

江國香織さんいいですよね!!
Rosso を読んでから誰かと語りたくて
仕方なかったのでうれしいエントリーです。

>登場人物ひとりひとりが自分自身に憑依してしまうのだ

なんてぴったりな表現!
実は Blu の順正、芽実にはそんなに共感できなかったんですね。
でも Rosso のあおいとマーヴは乗り移ってしまって泣けました。
私が女性だからあおいの視点に立ちやすいのかと思ってましたが、これは江國さんの文章だからですね、たぶん。

切ない、そして楽しい読書でした。
ありがとうございました。
2. Posted by テゾーロのバスタブ   2009年06月18日 04:20
■あおいが憑依してますか・・・危険ですね。
 彼女は満ち足りているからこそ
 かつての愛が忘れられない
 そういう部分もありますよね。
 カツカツの生活をして育児にせかされる
 そんな日常ならば、昔の恋を懐かしむことすら
 ないのかもしれません。
 打ち込む仕事もなく、裕福なマーブと
 暮らして読書三昧の日々だからこそ
 バランスを取るために、満たされない何かを
 探す必要もあったような気がします。

 順正とあおい。
 その後、どうなったと思う?
 ってのは、次回お会いする時までの
 おたのしみに取っておきます。
 素敵な読書タイムをありがとう。
         Much Love

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