2012年04月17日

Do you want to know a secret?

15b5d15f.jpgDo you want to know a secret?
なぜ、なにゆえにビートルズのデビュー曲が
『Love me do』なのか?の謎だ。
これはビートルズを知れば知るほどわからない。
小学生の私が初めて手にした赤盤の1曲目には
さほどこころ動かされなかった。
どちらかといえば単調でつまらなく
「自分のハーモニカとはあきらかに違うぞ」
くらいの印象だったと思う。今もそうだ。
『She loves you』の衝撃とは雲泥の差なのだ。
そう、こういう8ビートのロックンロールなら
彼らはそれ以前に山ほどレパートリーがあったのに
どうしてズンタッ!ズンタッ!の重い2拍子で、さほど
キャッチーでもないこの曲でデビューさせたのか、の謎だ。

ジョージ・マーティンの「耳こそはすべて」と云う本で
デビュー当時を探ったがなにも書かれてはいなかった。
行間を読むに、どうやら1962年当時においては
すでに8ビートのロックンロールを古くさいと
製作者サイドでは考えていたふしがある。
実際アメリカでの成功時には「エルヴィスの焼き直し」とか
「懐古主義」などと言われていたと記憶している。
今となっては50年代も60年代もたいして違わないのだが
当時の10年と今日の10年の時の流れは明らかに違うのだ。

ボーカル名&バンド名という看板ありきのロックグループはあっても
全員が看板でありグループとして価値のあるアーティストが
それまでに皆無だった事もあってレコード会社は当初
かなり考えたあげくに冒険に出たのがこの『Love me do』だ。
シングルB面が『P.S.I love you』という甘いポップスだった事からも
時代がロックンロールを求めていなかったと推測できる。

この曲にまつわるどこでも検索できる四方山話はあえて割愛する。

ジョージ・マーティンという人は音楽を科学する達人で
その楽器の周波数であるとか和音の構成であるとか
録音機械の特徴も理論で構築するタイプなのだが
ただそれだけではなく、理屈抜きの感性の部分にも
そうとうに長けていた。だからこそビートルズの個々の魅力と
4人(当時3人)の相乗効果におおいに期待した。
しかしながら「そこはかとなく」感じていたに過ぎない。

彼に出会うまでのビートルズは数社のオーディションで
箸にも棒にもかからなくハネられていた。
どこのレコード会社も首を縦に振らなかったのに
たまたま当時ヒットを連発していたジョージだから
レコードをイッシューする事ができた。
その権限があったという事だ。

そして2枚目を制作するところから少しずつ変化する。
『Please please me』である。
あのハーモニーを考案したのがジョージ・マーティンなのか
ビートルズ自身なのかは知らないがこの曲を持って来た時に
ジョージ・マーティンのなかで「グループ」という概念が
決定的になったのだ。つまり「ロックバンド」としてだ。
演奏力も歌唱力も作曲能力に対しても認め始めた。
リンゴの加入もおおいに影響しているだろう。

そして1stアルバムを制作する。
『Love me do』は入っているもののB面の1曲目
つまり起承転結の「転」扱いなのである。
『I saw her standing there』にはじまり
『Twist & shout』に終わるのはシングル作成時には
古くさいと考えていたロックンロールにたいして
ビートルズが猛烈なエネルギーを発揮するのだと
ジョージ・マーティンが認めたからである。

そう。
長文になってしまったが1962年にエルヴィスがなにをしていたか
それを考えるとわかりやすい。あのラブバラード
『Are You Lonesome Tonight?』が1960年。
『Can't Help Falling in Love』が1961年のヒットだ。
ロックンローラーのエルヴィスがエンターティナーに
舵を切っている事からも歴然であり、サンレコードの
華々しく荒々しいロックンロール時代は1955年までなのだ。
それから7年も経っている。
レコード会社が「ロックンロールなんて売れない」と
そう考えていたって何ら不思議ではないのだ。

『Love me do』でデビューしたのにはそういう背景があり
発掘してくれたジョージ・マーティンよありがとう!なのだ。

そして最後に、ここに書いたのは、ほんの一部だ、と付け加えておく。
あくまで私の推測なのであり取り巻く状況のほんの一部分に過ぎないし
ビートルズのデビューを書くだけでも全13巻の本になってしまうから。

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トラックバック一覧

1. Love Me Do  [ あいだにあるもの ]   2012年04月16日 22:03
最近ビートルズネタが多くて申し訳ない。って謝ることもないか。これはいつか書こうとおもっていた。デビューシングル"Love Me Do"だ。1962年の出来事について、まだ新鮮にわくわくして ...

コメント一覧

1. Posted by Yuji   2012年04月16日 22:51
■なーるほど。
 エルヴィスもってきたのは良いですね。
 リードシンガー不在のグループによるバンドサウンド。
 ビートルズ以前と以後は、R&Rのなにが違うのか。
 そこをどう「悪目立ち」させるか。

 そのへんの角度でこの曲を聴いてわかりやすくなるのに
 エルヴィスの例えはバッチリです。

2. Posted by ふみくん   2012年04月16日 23:49
こんばんは。
この曲がデビューシングルなのはたしかに謎ですよね。
『Please please me』のほうが完成度が高いし、もしポールを前面に出すなら『I saw her standing there』のほうが断然カッコイイと思います。

なので大島さんの「8ビートのロックンロールは古かった?」考察は目からウロコです。
『Love me do』の他にない魅力は、ジョンとポールの2人のボーカルの掛け合いの斬新さじゃないかと思います。
You do love me じゃなくて、最後にdoが来るのも新鮮です!
3. Posted by ホヌ・マハ郎   2012年04月16日 23:56
■Yuji、たのしい宿題をありがとう。(笑)
 実際にエルヴィスと会った時もジョンは悪態ついてましたよね。
 自分が影響を受けたエルヴィスとは別人だから。

 この1963年のビートルズのデビューLPがなければ
 ロックは衰退していたかもしれない。
 ま、歴史にたらればもニラレバもないのですが
 そんなことを、書きながら実感しました。
 だって当時のキャピトルレコードの稼ぎ頭が
 フランクシナトラなんだもん。
4. Posted by ホヌ・マハ郎   2012年04月17日 00:09
■ふみくんありがとう。仰せのとおりです。
 ジョージ・マーティンが最初にビートルズを聴いた時に
 リードボーカルを誰にするのかで悩んだそうです。
 その結論があのどちらが主旋律なのかわからない
 『Love me do』を取ったという考え方もアリですよね。

 1stLPでR&Bコーラス・グループのシュレルズを
 カヴァーしてたりするのも8ビートのロックンロールを
 レコード会社が古いと感じていた証になると思います。
 たしかにジョンもポールもそこらへん大好きだったんですけどね。

 『Love me do』のdoは動詞に対する強調ですよね。
 You do love meでは中学生なら追試です。(笑)
 「恋=Do!」という名曲を思い出しました。
5. Posted by 駄魔屋   2012年04月18日 08:31
ビートルズがオーディション落ちたのは、ロックンロール自体古い時代遅れの音楽と感じられてとデッカレコードのディレクターが話しをしていたとおもいます。
たしか、英国では、クリフリチャードが一番のアイドルでしたし。
手探りでデビューして行ったんでしょうね。
6. Posted by ホヌ・マハ郎   2012年04月18日 13:28
■駄魔屋さんは世民研?
 よくご存知ですな。

 クリフリチャードから連想するのがフリフリチキンと
 トイリチャードという私です。

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