2012年11月02日

彼女の腕時計2 〜もうひとつのストーリー

d1ff44ee.jpg時男はとても嫉妬深いところがある。
そんなところも含めて計子は時男とは
決して離れる事ができないと考えている。
おおきな声では言えないがジェラシーから
暴力をふるわれた事もある。しかし
置きかえて考えたのなら、それは
深い愛情でもあり強い独占欲は
幼児性でもあり彼女の母性をくすぐった。
ごめんよごめんよ、と涙をポロポロ
流しながら謝る彼を抱きしめていると
私以外にこの人を包んであげられる人なんて
この世にいないのだとこころから思ってしまうし
短気なところも長所として捉えたのなら
人一倍素直なのだと考えられる。

計子は仕事ができる。
しかも余暇には自分磨きを怠らない。
セルフモチベーションがつよくはたらくので
たいていの男性は自分には荷が重いと感じてしまうのか
仲間として見てしまうのか良い飲み友達になっても
恋愛関係にはなかなか発展しないタイプだった。
美人でありスタイルも良くおしゃれで健康的なのに
どうして彼氏のひとりもいないのか、と
女友達によく不思議がられたものである。

ところが時男は違っていた。持ち前の甘えん坊な
人懐っこさを隠そうともせず出会った瞬間から
ふたりきりでいる事を好んだのだ。
ひとに甘え、そして甘えられる快感に痺れた。
必要とし必要とされる事ってこんなにしあわせなんだと
こころから思えた。

出会って1年後。ふたりでハワイへ出かけたのは
フラを踊る計子には自然なことだった。
その1年のあいだに2度ハワイにフラを勉強するために
出掛けてはいたものの、行くたびに見るもの見るもの
すべて時男に見せてあげたくなってしまう。
この空、この空気、海や雲やハワイ人のホスピタリティ
自分がすばらしいと思えるすべてを時男と共有したかった。

それが叶って眩しい光の中、ふたりはアラモアナを歩いていた。
彼はふと時計屋の前で立ち止まった。
「少しだけ見ても良いかな」
時男には身分不相応ともいえる高級店だが
リゾート地なのだし計子といっしょなら抵抗がない。
以前から欲しかったクロノグラフが目に留まると
そこから動けなくなってしまった。その機能美は
ひとを釘付けにしてしまう魅力があるのだ。

「ねぇ、ふたりの1年の記念にこの時計をプレゼントする」
「こんな高価なもの貰えるかよ。欲しかったら自分で買うさ」
「このあいだのプレゼンが見事に決まっちゃって言ってなかったけど
ボーナスしこたま入っちゃったんだ。あぶく銭は形に換えないと
いつの間にかなくなっちゃうものなのよ。だからもらってよ」

日焼けした時男にそのスイス製の重厚なクロノグラフは似合った。
帰りの飛行機でとなりで眠る彼を眺めていると、なんだか彼自身が
ワンランク上の人間になったような気がして計子も満足だった。

ハワイから帰るとふたりの日常が始まった。
楽園の余韻など感じている暇もなくハードワークだ。
夜も更けて帰ってきた計子に時男が言う。

「ね、計子。俺やっぱり仕事上とはいえおまえが
他の男と酒飲んだりするのって耐えられないんだよね」
「ばっかじゃないの。私が浮気するとでも思うわけ」
「おまえ酒が入ると淫らだしさ」
「バカ・・・・・・」
「その色っぽい感じがたまらないんだけど誰にも見せたくないじゃん」
「誰にも見せてるわけじゃないのは時男がいちばん知ってるでしょ。
もう、いい加減にしてね。おこるわよ」
「だからひとつだけお願いを聞いてくれないかな」
「なによ」
「酒の付き合いがある日にはこの時計をしててくれないか」
「・・・・・・」
「もともとおまえの金で買ったんだから酔っ払って失くしても
俺は気にしないしさ、女性がこんないかついメンズウォッチしてたら
普通の男なら口説こうなんて気も起こらないだろうし」
「魔除けなんだ」(笑)
「そんなとこかな」
「いいわよ。そんなのお安い御用よ」

「ずっといっしょだよ」

それ以来、夜出かける時。彼女の腕には
重厚なクロノグラフが光っている。

トラックバックURL

コメント一覧

1. Posted by ひな   2012年11月02日 10:51
お…面白い!
続編お待ちしております!

大島さま直木賞狙って真剣に書いてみたらどうです!
2. Posted by ひみつのAkko♪   2012年11月02日 11:06
引き込まれる〜!
3. Posted by ホヌ・マハ郎   2012年11月02日 11:14
■ひなさま、ありがとう。
 でもね、最初の話が好評だったので
 こちらはもう少し丁寧に書いたんだけど
 長過ぎ、との批評が・・・・・
 1話のほうの続編を望む声も多く
 昨夜はその後彼女はどうなっていくのか
 月9バージョン、CMバージョン、映画バージョンなど
 それぞれでいくとおりもみんなで考えましたよ。
 深夜のハノハノカウンターはそんなふうです。(笑)
 妄想族。
4. Posted by ホヌ・マハ郎   2012年11月02日 11:16
■ひみつのAkko♪さま、ハロウィンはありがとう。
 うれしかったな。

 「ずっといっしょだよ」が登場人物どちらのセリフなのか
 2話とも、どちらにもとれるようにしてあるところがミソです。


5. Posted by 鳥雪   2012年11月02日 12:54
私も引き込まれた です

人の妄想話を聞くのは楽しいです
自分の妄想と結びつけると 更に楽しくなり
そのうち すんごい物語ができあがりそうな予感がしますぜ

深夜のハノハノカウンター 参加したい、、、
6. Posted by ホヌ・マハ郎   2012年11月02日 13:06
■鳥雪さま、いつかゆっくり話せるよ。
 たのしみにしております。
7. Posted by AKI33   2012年11月03日 10:32
時男と計子は結婚しているのだろうか?とか、時男が計子に時計を貸している間、時男はどんな時計をしているんだろう?とか色々と想像させてもらっています。

続編希望!
8. Posted by ホヌ・マハ郎   2012年11月04日 03:23
■AKI33さま、時男の時計は腹時計です。
 ふたりはまだ結婚していません。
 と、今は思っていますが
 文章を書き始めると
 まったく違った事になるかも知れないところが
 自分でも知らない私なのです。
 幽体離脱しているのかも知れません。
9. Posted by Yuji   2012年11月04日 15:17
□幽体離脱…してる…絶対してる…

 なんでそこまで知ってるんですか…?
 どこまで知ってるんですか…?

 やばいなこの人…(笑)

10. Posted by ホヌ・マハ郎   2012年11月04日 18:14
■きっとYujiも経験してると思うけれど
 今日の要点はコレ。
 そう思って書き始めても
 そのとおりに筆が進まなかったり
 またそれが妙に自分にとって
 俺ってこんなこと考えてるんだ、みたいに
 意外な言葉が溢れだしたりします。
 この2編のストーリーも書いてるうちに
 世界が拡がっちゃいました。
 自分の言葉に触発されるという感覚。
 そこがBlogとつぶやき系との決定的な違いですね。
 

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
Profile

大島”ビッグアイラ...

コメントありがとう!
「最新トラックバック」は提供を終了しました。
新着!ViVa なBlog
Archives
Moon Phases
livedoor プロフィール

大島”ビッグアイラ...

  • ライブドアブログ